試した中でいちばん快感を覚えたのは、MacBook Airで、Mac OSの「プレビュー」で読む方法だった。インターフェイスがすっきりしている。アイコン等が目障りだとイヤなのだ。余分なソフトをインストールしなくていいし、操作にも慣れているし、速度もまあまあ。
この機能は、Mac OSがLionのときから愛用していた。難しい本は読む前にバラして、ScanSnapでスキャンして、AcrobatでOCRをかけて透明テキストを埋めこむ。OCRをかけるのは、テキスト抽出のためでも検索のためでもなくて、ただハイライトやアンダーラインなどの注釈をつけやすくするためだ。
OSをLionからMavericksにバージョンアップすると、プレビューのPDF編集機能も改善されていた。感心したのはこの、微妙に波打った蛍光ペンの表現。単にハイライトなのか、それとも画像かなんか乗せてるのだろうか。
リアルの本に蛍光ペンを長々と引くのはなんだかためらわれる。インクで紙が波打ったりするし、塗りまちがったら汚くなる。電子媒体ならそれがないし、なにより、塗った後で消したり色を変えたりできる。「塗ったあとで色を変えられる」、なんてすごいことだ。昔の人が聞いたらびっくりだ。そこには蛍光ペンのイデアだけがあるのだ。
PCで書きこみをするなんて、まどろっこしい、と思っていた。ところが、意外なことに紙より速いのだ。紙を読んでいるとき、書きこみにかかる時間を、試しに計ってみた。すると、単語の囲みや一行のアンダーラインには5秒、複数行の囲みやアンダーラインは10秒。メモを書きこむには1文字あたり1秒かかっていることがわかった。
PDFへの書きこみは、単語や一行だと同じくらいだが、複数行やメモだと紙よりもずいぶん速い。上記画像で、手でハイライトをつけるなら三行ぶん手を動かさねばならない。しかしPDFなら青の矢印のぶんだけカーソルを動かせばいい。そして、書きこみの見やすさや再利用性は圧倒的にPDFのほうが優れている。だから紙の本をわざわざスキャンしてでもPDFにするのだ。
…と、ここまでは読書電子化極楽話なのだけど、困ったことがおきた。
Mavericks(10.9.1)のプレビューで、透明テキストつきのPDFを編集して保存すると、透明テキストが全部失われてしまうようだ。しかも、手動で保存しなくても、編集した時点で自動保存されるので、何か編集を開始したら、透明テキストもろとも注釈は失われ、二度と返ってこない。It's gone in the air. You can never capture it again. なお、編集しなくても「複製」だけでも同じ現象が起こるようだ。
PDF自体は、また自炊すれば手に入る。しかし注釈は、再現不可能な個人オリジナルの情報だ。それが強制上書で消えてなくなるのは怖ろしい。その症状と、その恐怖は、この「自動保存でフォトショップのレイヤーが統合される」件に似ている(→【重要な問題!!】Mac OSX 10.7 Lionのプレビューは危険!?)
2015/7/17 追記:10.10.4 で直ったかも