2020年3月6日金曜日

旅 東アフリカ 03

Day 3 (2019/12/27):サファリ2日目


5時半に起床。ここまでの睡眠不足を取り戻した。外はまだ真っ暗。レストラン棟で、昨日注文しておいた朝食の紙袋を受け取る。バナナマフィン、ソーセージ、フルーツ。それに熱いコーヒー。ドライバー氏もやってきて、スタッフにちょっかいを出している。

何でも一番が好きなドライバー氏。一番に出発して、渡し船の乗り場に一番乗りして、7時の出発を待つ。I am the first, I am strong man. が口癖。おれは strong だから子どもは6人いるのだ、こんど妻を増員して、あと4人は作るのだ、と。

朝焼けが美しい。川を眺めていると、水辺に寄るな、ワニが出るぞ、と。

渡し船で北側へ。中国の建設会社が橋を作っている。やつらは我々の国立公園を破壊している、とドライバー氏。橋があればほんの少しは便利だけれど、渡し船で事は足りているように見える。

車の屋根を開けて、サファリに出発。日本の中古のワゴン車を独自改造したものだが、高い視点から外が見られるし、日差しも遮れるし、揺れる車内でずっと立ってるのもしんどいので好きなときに休めるし、よくできた乗り物。朝の景色だけですでに感動している。



マーチソン・フォールズ国立公園のサファリは、北岸の、東西20km弱、南北10kmほどのエリア。ケニア人に言わせると「こじんまりしている」。東京でいえば山手線の内側よりもひとまわり広いぐらい、大阪でいえば淀川の北から神戸までが一面の野原になっていて、そこを動物を探しながら車で走り回る。

いちばん多いのは、鹿のたぐい。ウガンダの「国獣」ウガンダ・コープ。それと、なかなか区別がつかないアンテロープ。あと、とても小さな鹿。


バッファロー。背中によく鳥が止まっている。「ビッグ5」の一角、にしてはとてもありふれている。(ビッグ5=ライオン・サイ・ゾウ・バッファロー・ヒョウ)。

バブーンもいる。サル類は、見通しのいいサバンナよりも、森の中のほうが暮らしやすそう。
キリン登場。そのへんにキリンがいるシチュエーションに興奮。大きい。天然のクレーン車。


ゾウを探す。ドライバー氏がゾウのフンをみつける。まだフレッシュだから近くにいるにちがいないと。広い野原に出ると、そこに忽然とゾウがいた。神々しい。車が集まっても気にせず悠々と歩く。

きれいな鳥たち。


動物が檻にいるのを見るのと、こちらが車という檻に入って自由な動物を見るのとでは、まったくちがう。キリンもゾウも、見たことあると思っていたけれど、サファリのを見ると、これまで見たことあると思っていたのは何だったのかと思った。日本にはキリンもゾウもいないけれど、とくに子どもの世界なんかでは、キャラクター化されて身の回りにやたらと登場する存在。でも、その本物を見るには、ここまで来るしかない。

ひとたびキリンが野原にいるのを見ると、あれがどうやって一日中あんな狭い檻の中で暮らせるものかと想像がつかなくなる。一週間ぐらい家にひきこもったあと、おもむろに外に出て、美術館とか、だだっぴろい公共施設なんかに疲れて椅子に座って、そこに自分のいた部屋の大きさを想い描くと、どうやって一日中あんな狭い場所で暮らしていたのかと、いつも飽きもせず不思議に思う。それと同じように。でもそのあと部屋に帰って、結局はもとの狭い空間に身を収める。キリンもそうなのかもしれない。

さて、草食動物に比べて、肉食動物は圧倒的に少ない。見通しのいい平原で、身体の隠しようもない大きな草食動物がいたら、すぐに食い尽くされていなくなるのではないかと思っていたが、どうもその心配はなさそうだった。

何もないところで、ドライバー氏が目を凝らしはじめた。何を探しているのかすら、さっぱりわからない。

ドライバー氏、遠くにある木を指差して「ヒョウだ!」と声をあげた。あそこにいるぞと、指さされても、まだわからない。何しろ見たことがないし、どこにどんな形でいるのかも想像できなくて、うまく探せない。

お前はなんという bad eye だと罵られながら、双眼鏡を借りて木の枝を一本ずつたどると、ヒョウ柄の猫が木の又で寝てるのをみつけた。あれか。。

この公園では、ヒョウは珍しい。ドライバー氏は他のドライバーに電話を掛ける。どうやって場所を伝えてるのかわからないけれど、すぐに10台ばかり車が集まってくる。誇らしげなドライバー氏。

ヒョウを見つけたら、写真を撮る。ヒョウの写真ならもっといいのがネットにいくらでもあるのに、それでも撮る。昔だったらライフルで撃ったわけで、それが男のロマンとされていたわけだが、今となってはそんなことをしても迷惑でしかない。写真だけでみんな満足するようになってよかった。ヘルシーでエコな遊びになってよかった。ポケモンを探すのと同じような遊び。

満足してロッジに帰る。昼食。きのうガイド氏が食べていたチャパティがおいしそうだったので、チャパティのラップサンドにしてみたら正解。シェフがインド系なのだろうか、あるいはウガンダではチャパティをそれだけ良く食べるのか。

部屋で少し休んで、午後はボートサファリ。おもしろいガイドさんとナイル河をゆく。カバがたくさんいる。たくさんいすぎて珍しくなさすぎて、あまり写真をとってかった…。カバはとても危険な動物で、アフリカで最も人を殺す動物は蚊で、そのつぎはカバなのだという。陸上で暴れまわっているところを見てみたかった。


ワニ登場。トイレに行きたい人がいたら、ボートを降りてそこの茂みでどうぞー、とガイドさん。そこまでいわれても、ムスング(ウガンダで黒人以外の白人や黄色人種はこう呼ばれる)はなかなか気が付かない。ボートで近寄ってはじめて、おどろきの声があがる。


ワニは動かない。哺乳類だといくらボサッとしていても、目のあたりとか、お腹まわりとかに動きがあるものだけれど、爬虫類はしくみがちがうらしく、本当に模型のように全く動かないので、相当近づいてもうっかり気が付かなさそう。


崖には穴があって、きれいな鳥が棲んでいる。トルコのカッパドキアでも、中国は洛陽の龍門石窟でも、最近たまたま似た景色を見た。ゾウやキリンも川から見られる。

滝に到着。ここで折り返す。あらかじめ申し込んで15ドル払っておけば、ここから滝のてっぺんまで1時間ほどハイキングをして、そこにドライバーに迎えに来てもらうように手配できたようだ。滝を見に行く往復が省けて効率的だろう。帰りもいろいろ動物がいるので飽きはしなかったけれど、まあ同じ景色なので。

17時ごろに船着き場に到着して、ロッジに戻る。ほっとする。夕食と明日の朝食を予約。ドライバー氏と行程を相談。朝ゆっくりめに起きてゆったり朝食してそのままカンパラに帰ろうというドライバー氏の提案だったのだけど、遠くから来たし、もうちょっと頑張ってみたい、とお願いして、明日も早朝からサファリに行くことになった。

夕食は川でとれるナイルパーチのフィッシュアンドチップス。さすが英国文化圏、おいしい。ナイル川では昔からティラピアやナイルパーチの養殖が行われている。Krestはアフリカ特有のビターレモンのトニックのようなソーダ、気に入った。デザートにはレモンケーキ。

今日も早く寝る。おすだけベープに斃れたホタルが、床の上で光っている。気温にも虫にも悩まされず快適。


旅 東アフリカ 02

Day 2 (2019/12/26):サファリ1日目


6時起床。外は大雨で真っ暗。びちゃびちゃの中庭で、律儀に朝食が用意されている。料理が濡れないように、盛り付けるときだけスタッフが蓋を開けてくれる。丁寧だけど、ここまでするなら部屋の中にすればいいのにと思う。アフリカには、妙に律儀なところがある。

1日目は滝を見にいって、2日目は午前にゲームサファリ、午後はボートサファリ、3日目の午前は軽くゲームサファリをする、というのが、レッドチリのサファリツアーの規定のスケジュール。

大雨だし、国立公園に早く着いても今日は滝を見るだけだし、と思ってゆっくり出ることにして、ドライバーの迎えは8時に頼んでいた。ところがドライバーは7時半には到着していて、8時過ぎに出ていくと、遅い!という。

その時点ではわからなかったのだが、もしもっと早くに出ていたら、1日目の夕方に1回目のゲームサファリに行けたそうだ。そうすると、2日目のボートサファリを片道だけにして、滝までハイキングして、そのまま滝を見て、3日目は朝ちょっとゆっくりして早く帰ってくる、というプランが可能だったようだ。

いま思うと、このプランは合理的で、移動距離が少ないし、朝だけでなく夕方のサファリが楽しめる。1日目・2日目のサファリがうまくいかなければ3日目にさらに追加することもできる。もし同じようにカンパラからマーチソン国立公園2泊3日ルートを試みる人があれば、早起きしてこのプランに挑戦してみてほしい。

大雨の中を意外にスムーズに車は走る。道はところどころ川、どころか、滝のようになっている。


めちゃ高いけどおいしいコーヒーがあるけど飲んでいく?といわれて寄ったコーヒースタンド。ウガンダ産のコーヒー。7000シリング(230円)。運転手氏のぶんと2つ購入。ローストが深くて抽出の薄いスタバ的な味。なごむ。


国立公園に近い街、マシンディへ。道路脇に見える景色はアフリカ。赤土。小間物屋。その前でくつろぐ人々。角のある牛。羊。それを追う牧童。草づくりの小屋。写真が撮りたかったら止めるから言ってくれとドライバー氏にいわれるが、あっと思ったら通り過ぎていて、なかなか戻ってくれともいえない。着いたばかりで何を見ても珍しすぎて、撮りたくなるものはあまりにも細かすぎて、それがあとで登場するものなのか、ここにしかないものなのかもわからなくて。結局写真はほとんどあきらめて、ただただ窓の外を眺めて初めてのアフリカの景色を摂取していた。




ロードサイドで、ウガンダ旅行者に人気の牛肉の串焼き。2,000シリング。たしかに、おいしい。中国の羊肉串のようにスパイスを効かせるのではなく、ほとんど塩だけというような素朴な味で、肉は見た目ほど固くはない。


マシンディには刑務所があって、派手な囚人服の人が農場で働いていた。

ツーリスト向けのレストランで昼食。ウガンダっぽいものを食べてみようと、ヤギのシチュー。主食はフライドポテトとポショを注文。24,000シリング。これも昨日と同じような優しい味。ヤギ肉には心配したクセはまったくない。肉は食べにくいので、ダシガラと割り切ることにした。

マシンディを出て、ほどなく、舗装のない赤土の道に入る。このあたりは電線があるけど、これはフェイクで、電気は来てないのだとドライバー氏。水道もなくて、ときどき井戸があって、そこで組んだ水をポリタンクにいれて自転車に乗せて、あるいは頭に乗せて運んでいる。人々の顔は明るい。



国立公園の入り口に到着。入場料の80ドルを払う。ドライバー氏はしょっちゅう来ているそうで国立公園のスタッフと仲が良い。今回はドライバー氏がガイドも兼ねるとのこと。

ほどなく動物登場。バブーン(baboon)と呼ばれるヒヒ。


1時間半ほど走って、滝のてっぺんへ。あまり滝に興味がないほうだけれど、行った人がみんなすごいすごいと書いていて、どんなものかとおもっていた。たしかに、すごい。高さはそんなにないのだけど、大量の水が岩に叩きつけられてはしぶきがあがり、飛沫が細かくなって空気に漂って虹がかかる。展望台から見下ろしていても身体が濡れる。岩なんかすぐに削れて無くなってしまうのではないかと思うほど。いろんな滝を見たけれど、こんなに荒れ狂ってる滝は初めてかもしれない。雨の後だったからかもしれない。


キャンプサイトに到着。格安サファリとたかをくくっていたが、案外ちゃんとしている。明るいスタッフから、わかりやすい英語で注意事項を聞く。食べ物を持って歩くとバブーンに襲われるとか、夜にカバに出くわしたらどうするかとか。今回の滞在中はイボイノシシにもカバにも会わなかった。夕食のメニューも選べる。充電もできる。



基本料金の場合はテントになるが、追加料金を払ってロッジにしてみた。思ったよりおしゃれで快適。ウガンダの国立公園はマラリアのリスクが高い地域。ドアに窓に部屋の四方に、結界を張るようにおすだけベープを吹きつけた。シャワーは水だが、日があるうちに浴びたのであまり気にならなかった。

夕食。クリスマスのスペシャルメニューのローストチキン。それに大量のマッシュポテト。おいしい。ドライバー氏はチャパティだけ焼いてもらって食べていた。食後は焚き火とホタルを眺めてコーヒー。サバイバル生活と思っていたが、ほとんど不便を感じなくて、むしろ快適。ヨーロッパから家族で来ている人が多い。



蚊帳に入って、8時に就寝。夜は部屋の電気が止まる。扇風機も止まるが、暑くて眠れないということも(ぎりぎり)なかった。